変奏鋼曲 アトリス 第五話

ホーク・アルヴィレス(男)
18歳の主人公。
正義感に溢れ、いつでも正しい道を歩もうとする。
明るくハッキリと物事を口にし、裏表のない性格。
一般スクールの生徒として生活をしている。
「馴染む」ということにかけては抜群のセンスを持っている。

ルジィ・クローク(男)
ホークの幼馴染であり親友。
明るくノリはいいが、やる時はきちんと仕事をこなす男。
的確かつ冷静な判断力で、見事な戦略を立てる。
また、自作ゲームを披露するのが趣味。

ラク(女)
謎の機体【テンペスタ】の専属メカニック。
操縦テクニックがないわけではないが、中の下程度。
腰には親の形見の銃が装備されている。
真面目を絵に描いたような女の子。
誰かが死ぬということに、過剰に反応する。
年齢不詳。

クロス(女)
IDカードという存在の謎の少女。
これは吉と出るか凶と出るか。
年齢及びその他全ては不詳。

フォズマ・ハロウス(男)
帝国軍第六進撃軍中佐。36歳。
狡猾な性格と戦術眼、そしてその機体操作技術で今の地位までのし上がる。
必要とあらば女子供も容赦なく切り捨てる。

ディア・アルメロ(女)
帝国軍第六進撃軍少佐の29歳。
型にはまったような典型的な軍人。
上司と軍部の命令は絶対。
邪魔になると判断したら何者をも捨て去る。

ロク・ローンスト(男)
駐屯地シュメールに駐在する、そこそこ腕のいいティスタ。
相棒のフスキと共に、コンビネーションアタックをかけるのが得意。
酒と女が大の好物。俗物。
35歳。

フスキ・フォドン(男)
駐屯地シュメールに駐在するそこそこ腕のいいティスタ。
相棒はロクで、主に前衛を担当。
女は大好き。
野心は特にない33歳

ウェル・シュトリ(男)
レヴァンティス帝国反乱組織「グラム」の幹部。
別名「双璧の剣」といい、DMに乗っている時は比類なき強さを発揮する。
いつでも軽口を叩いている。

クリア・プリースティ(女)
シュメールで捕まっている少女。
物語の中核を担う人物かもしれない。





フォズマ「まさか、こうも早くに出会えるとは思わなかったよ。」

ウェル「それはそれは、こっちは君の首を取りたくて仕方ないよ。
    この手枷と足枷はどうにか外れないものかな。」

フォズマ「憎まれ口をしゃあしゃあと。
     貴様から味わった苦汁、忘れてはおらんぞ。」

ウェル「僕が何かしたかい?
    あいにく、人の恨みを買うことが多くてね。
    どの件か全く覚えていないんだ。」

フォズマ「吠えているがいいさ。所詮貴様は敗軍の将。
     貴様の部下は逃亡兵以外皆殺しにした。」

ウェル「・・・・・・」

フォズマ「残るは貴様と、後一人だ。」

ウェル「あと・・・一人?」

フォズマ「なに、ただの民間人の女さ。
     もっとも、上玉だから部下が黙ってるとは思えんがね。」

ウェル「お前・・・まさか・・・!」

フォズマ「戦争とは弱肉強食。
     弱いものは強いものの礎となり滅ぶ運命。
     そこに逆転の定理は存在しない。」

ウェル「なら、もう一つ変えようがない定理を教えてあげるよ。」

フォズマ「ほう・・・」

ウェル「盛者必衰の理・・・レヴァンティス帝国は、必ずグラムが叩き潰す。」

フォズマ「ククク・・・ハーッハッハッハッハ!!
     面白い、死地で囚われている貴様の口から出る言葉とは到底思えんな!
     貴様が死んで、グラムは総崩れして、そして終了だ。
     このヴィスティの覇権は帝国のものとなるのだよ!
     せいぜい、貴様の死後の抵抗を見せてもらおうか。」

ウェル「(ラク・・後は、頼むよ・・・。)」


クリア「いや・・・いやぁぁ――――――っ!!!!」


ホーク「変奏鋼曲アトリス 第五話【聖女〜前編〜】」


ルジィ「しかし何だな、俺達も迂闊だった。」

ホーク「うん?どういうことだ?」

ルジィ「崖城都市って温室でぬくぬくしてたからな。
    外の情報に疎くなってる。
    まさか、帝国軍の駐屯地がこんなにもあるとは。」

ホーク「合計どれくらいあるんだよ?」

クロス「シュバイン嬢のデータによるとこのヴィスティ全域で計十七箇所。
    現在向かっているのは、ミシハズから一番近い駐屯地、シュメールです。」

ホーク「十七って、この狭いヴィスティに十七箇所もあるのかよ。」

ルジィ「俺達は知らなさすぎたようだ。
    さすがにこんな世界情勢、おかしすぎる。」

ホーク「本当に帝国の連中は戦争をふっかけるみたいだな。」

ルジィ「対して我らがアースベル国はというと。」

クロス「アースベル公国。このヴィスティ地方の五分の一程の国土で、穏健政治。
    兵役もなく、軍事関係には全く関与している節がない。
    唯一ある自衛軍も、予想戦力としては帝国の遥か下の戦力ライン。」

ホーク「負け戦は必至ってか?」

ルジィ「否定できないのが痛いところだな。
    ま、それをどうにかしようと動いてるのがラクなんだし、
    反帝国組織の【グラム】なんだろ。」

クロス「シュメールの帝国駐屯地、策的範囲に入りました。」

ホーク「よし、テンペスタを地上に降ろしてくれ。
    飛行状態だとすぐに相手方のレーダーにかかっちまうからな。」

クロス「了解しました。
    テンペスタを地上モードに切り替え。
    警戒網に注意しつつ着陸を行います。」

―――帝国軍第十二駐屯地シュメール―――

ルジィ「索敵圏内に入ったみたいだけど、まだバレてないよな?」

ホーク「大丈夫みたいだな。
    だけど見てみろよルジィ。
    この周辺に入った途端にDMの数が増えやがった。」

クロス「帝国軍量産型のDM【稲妻(フルミーネ)】を計八機確認。
    こちらにはまだ気付いていない様子です。」

ルジィ「そう簡単に気付かれても困るしな。
    とりあえず、こっから先の出方はわからない限り、
    俺達は動きようがないな。」

―――通信音

ラク「待って、今からシュメールの都市データを送るわ。
   街の地図のマーキング部分が主に現在使用されている地点。
   おそらく、中心部の大型の拠点地帯か、一番奥にいるはず。」

ホーク「二つに一つ、か。しかも後戻りはできないときた・・・。」

ルジィ「クロス、確率演算を。」

クロス「・・・対象が中心部にいる可能性が四割、一番奥にいる可能性が四割、
    この街から既に離れている可能性が二割、です。」

ルジィ「完全に五分五分ときたもんだ。」

ホーク「おまけにこの街にいない可能性まで提示されるとはな。」

ラク「いないっていう可能性は限りなくゼロに近いと思うわ。
   ウェルが捕らえられたという情報が入ったのが今日の早朝。
   現在の時間は正午を少し過ぎたあたり。」

クロス「このシュメールから一番近い帝国の軍事拠点までは最短でも十二時間。
    そうなると、街から離れている可能性は低くなります。」

ルジィ「だとしても、選択肢は二択あるわけだ。
    どうするんだ、ホーク?」

ホーク「どうするって言われても、俺が決めるのかよ。」

ルジィ「当たり前だ。このテンペスタのメインパイロットはお前だろ。
    俺はサポート専門だ。助言はすれども決定権はお前に預ける。」

ラク「そうね、結局現場の判断に頼らざるを得ないなら・・・。
   アルヴィレス君、あなたが決めて頂戴。」

ホーク「・・・わかった。それじゃ、中心部から探すぞ。」

ルジィ「その理由は?」

ホーク「わかんねぇよ、そんなの。
    けどさ、なんかわかんないけど、大事な物がある気がするんだ。」

ラク「要領を得ないけど、まぁいいわ。
   クロスにルートの転送をするから、合図と同時に突入よ。」

ホーク「了解だ。」

―――牢獄

フォズマ「いいザマじゃないか、ウェル・シュトリ」

ウェル「どうせなら、一思いに晒し首にでもして殺してくれると助かるんだけど。
    痛いのは、どうも好きじゃないんだよね。」

フォズマ「なぁに、もうそろそろ殺すさ。
     しかし貴様も無様なものだな。
     【双璧の剣】も、DMがなければただの人か。」

ウェル「攻めるのは好きなんだけど、護るのは性に合わなくてね。」

フォズマ「攻撃は最大の防御を地で行く貴様は実に厄介だったよ。
     だが、それも終わりだ。残りの時間、せいぜい足掻くがいいさ。」

―――フォズマ退場

ウェル「もう長くは・・・ないか。ラク・・・。」

―――地上

クロス「敵機センサーに反応。」

ルジィ「とちったか・・・!?」

ホーク「気にせず突破する!反応した連中だけたたくぞ!」

ルジィ「了解だ。遠距離はダメだな、爆風、爆音はアウトになる。」

ラク「まだ援軍のサインは出てないわ、仕掛けるなら今よ。」

クロス「一刀距離(ショートレンジ)でしかけます。
    蛇(セルペンテ)転送。」

ホーク「爆発を避けなきゃいけないってことは、
    必然的に燃料部周りは不可能ってことか。
    よし、動力線の多いコックピット周りを潰す!」

クロス「フォルダ【クロス】展開。
    【神の羽衣(プロヴァイデンス・セイントリー)】展開完了。」

ルジィ「一撃で決めろよ、ホーク!」

ホーク「あぁ、この動きなら・・・見切れる!」

―――テンペスタ、フルミーネの攻撃を避けて一突き。

ルジィ「ドンピシャだ。」

クロス「援軍に気付かれる前に現地点を離脱します。」

ホーク「一気に中心部に向かうぞ!」

―――別室

―――服装を正す軍人二人の奥には紙くずのように蹂躙された少女。

―――その姿は、ただ凄惨。

ロク「あー、久しぶりにサッパリさせてもらったぜ。」

フスキ「あぁ、全くだ。こんな上玉を平然と俺らに寄越すんだから、
    大佐も部下の扱いが分かってるってもんだよな。」

クリア「・・・・・・」

ロク「しっかし、この女ときたらマジでたまんねぇよなぁ。」

フスキ「あぁ・・・ただ犯(ヤ)ってるだけだってのに、
    ここまで快楽を味わえるとはなぁ。」

クリア「・・・・・」

ロク「おまけに壊れるまでしてもいいってんだぜ?
   ククク・・・笑いがとまらんさ・・・ヒヒ・・・。」

フスキ「この哨戒任務が終わったら、まぁた楽しませて貰うか。」

クリア「(誰か・・・・・・たす・・・け・・・て・・・)」


ホーク「っ・・・今のは・・・!?」

ルジィ「どうした、ホーク?」

ホーク「声が・・・聞こえた・・・。」

ラク「声・・・?もしかして、ウェル!?」

ホーク「いや、あの声は女の子・・・。」

クロス「聖・・・女・・・さま・・・。」

ルジィ「ん・・・?どうしたってんだ、クロス。」

クロス「システムの感応が桁違いに上がっています。
    この反応は・・・聖女、さま。」

ルジィ「聖女?なんなんだ、それは?」

クロス「今はまだ・・・お伝えすることができません。
    申し訳ありません、ですが・・・!」

ホーク「その聖女っていうのは、君にとって、大切な人なのか?」

クロス「はい・・・。」

ホーク「・・・ラク、この付近の人型熱源を全部俺に送ってくれ。」

ルジィ「ホーク?」

ラク「全部!?それって百人単位の熱量よ!?」

ホーク「かまわない。それに倣えば、ウェルって人の囚われてる場所も、
    クロスの言う聖女って人の場所も分かるかもしれない。」

ラク「・・・わかった、送る。」

ホーク「クロス、ここからはお前が頼りだ。
    聖女って子の反応はお前が一番わかるはずだし、
    俺らと違って熱源の識別も優れてる。
    とりあえずお前は、その聖女って子のとこに一気にいってくれ。」

クロス「はい・・・了解しました。・・・ホークさま。」

ホーク「ん、どうした?」

クロス「ありがとう・・・ございます。」


フォズマ「哨戒機が一機やられただと!?」

ディア「は。報告によれば見慣れぬDMが単機で潜入していたとのことです。
    やられたフルミーネは動力部が完全に停止、電極がショートしているため、
    記録も残っていないとのことです。」

フォズマ「【グラム】の連中め、既に追っ手を放っていたとはな。
     ロクとフスキに伝達だ。
     鼠を一匹始末しろ、と。」

ディア「了解しました。場合によっては私も出ますが?」

フォズマ「いや、それはしなくていい。
     お前のDMもまだ改修中というのを忘れるな。」

ディア「出過ぎた真似を・・・。」

フォズマ「それに問題はないさ。
     奴らはこの駐屯地でも腕利きだ。
     少々の相手では奴らの相手にもならんだろうよ。」

ディア「では、大佐は・・・?」

フォズマ「ウェルの処刑を早めるとするか。
     いや、もうしばらくここで見物とさせてもらうか。」

ディア「それでは、伝達致します。」

フォズマ「帝国軍駐屯地に単機潜入とは、随分と大胆な行動に出たものだ。
     だが、単機ではあの二人を止めることはできん。
     ゆっくりと亡骸でも拝ませてもらうか。」


ラク「転送完了。転送総人数399。この後の行動は?」

ホーク「中心部の熱源の絞込みを開始。5秒で済ませてくれ。」

クロス「既に完了しています。中心部の熱源、総数は24。」

ホーク「そこからお前の言う【聖女】って人のイメージはたどれるのか?」

クロス「おおよその見当はついています。」

ルジィ「・・・行くか、ホーク?」

ホーク「トーゼン。突っ込むぞ。一気にお姫様奪還といこうぜ。」

ラク「時間はあまりないわよ。ウェルも助けなきゃいけないんだし。」

クロス「大型熱源接近。DMの反応です!」

ルジィ「追っ手だと!?しかもレーダーの移動を見る限り、
    真っ直ぐこっちに向かってる!」

ホーク「仕方ない、迎え撃つ!」

ルジィ「機数は2だぞ。こっちが不利だ!」

ホーク「地の利を活かせって。ここは敵軍の駐屯地ってことは、
    DM用の補給ラインも確保されてる。
    つまり、兵器に泣きを見ることはないんだ。」

ルジィ「この状況でトラップ作るつもりかよ。
    時間がないぞ!?」

ホーク「クロス、君の能力は防御壁を張ることができるな?
    それの防御力と持続力は?」

クロス「【神の法衣(プロヴァイデンス・セイントリー)】の防御力は、
    ワミスカでの戦闘でご覧の通り、実弾兵器、光学兵器を完全に遮断します。
    持続時間は両腕の甲についている展開装置二つ分で合計七分ほどです。」

ルジィ「片腕で210秒か。攻撃するための武器は?」

クロス「通常設定時のセルペンテ、ヴェント、キャスカータのみとなっています。
    一型の私は防御用プログラムに特化されているため、
    攻撃用の武器はプログラムされていません。」

ホーク「ルジィ、周囲のスキャン画像と熱量から、弾薬庫の割り出しを頼む。
    出きる限り、多くな。」

ルジィ「あいよ。でもどうするよ。弾薬系の兵器は他のDMを呼んじまうぜ?」

ホーク「それでいいんだ。」

ルジィ「は?」

ホーク「手頃なマシンガンとライフルを入手したら、一気に弾薬庫にぶち込む。」

ラク「ちょっと!そんなことしたら本部まで爆発が・・!」

ホーク「その為のテンペスタだろ。クロス、キャスカータなんだけど、
    少しパターンを変えれるか?」

クロス「パターンを変える・・・?」

ホーク「あぁ。できれば・・・・」


ロク「いたぜ。野鼠だ。」

フスキ「フォズマ大佐の勅命だからな。
    確実に仕留めて、株価を上げとこうや。」

ロク「おうよ。それじゃぁ行こうかぁっ!」


クロス「カスタムタイプのフルミーネ確認。視認できる位置に入ります。」

ホーク「それじゃ、プラン通りに行くぞ。」

ルジィ「OK。キャスカータは手はずどおりに仕込んでおいた。
    タイムキープ、頼んだぜ。」

ラク「わかってる。行くわよ。プランスタート!」

クロス「セルペンテ転送。接近戦に以降。」

ホーク「ミッションスタートだ!」


次回予告


ラク「けど、本当に上手くいくのかしら・・・?」

ルジィ「しかし、もう賽は投げられたんだ。やるしかないだろ。」

クロス「ホークさまを信じましょう。今はそうするしかありません。」

ホーク「次回 変奏鋼曲アトリス 第六話【聖女〜後編〜】」

ルジィ「この子が・・・聖女?」

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